イジワルな彼とネガティブ彼女
その時ふいに、楓さんと目があった。


とまどっているように目を泳がせ、視線をそらした。


どうして?


そこまで私を避ける理由って、なに?


仕事中なのに、涙があふれそうになって、うつむいてごまかした。


楓さんは立ち上がって、こっちに近づいてくる気配を感じる。


私の横を通る時、楓さんは私の頭をそっとなでた。


大きくて、あったかい手。


そのまま、何も言わずに立ち去っていく楓さん。


追いかけたいけど、周囲の視線が気になってできない。


私にできたのは、楓さんの後ろ姿を見つめ続けることだけだった。


「高橋さん」


振り返ると、缶コーヒーを持った足立くんが立っていた。


「ありがとう」


私の声は、絞り出すようにかすれていた。





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