イジワルな彼とネガティブ彼女
足立くんは椅子に座るなり、


「高橋さん、俺の前では無理しなくていいですよ」


まわりを気にして、小声で話してきた。


「もしかして、見てた?」


「はい、バッチリ」


「恥ずかしいから、忘れて」


缶コーヒーを一口飲んだら、少しだけ落ち着いた。


「俺が、忘れさせてやりたいです」


まっすぐに、私を射抜くような視線が痛くて、目をそらした。


頭にはまだ、楓さんの手のひらの感触が残ってる。


「明日終わったら、俺と食事に行きませんか」


「足立くんごめんね、私はまだ・・・」


全部言い終わる前に、


「あんな仕打ちされてもまだ、本田さんのことが好きですか?」


と、さえぎられた。


「・・・うん、好き」


「ハッキリ言いますね」


「だから、私のことは気にしないで。


そろそろ戻ろう」


苦いブラックコーヒーを飲み干して、ブースへ向かった。



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