イジワルな彼とネガティブ彼女
気づいてしまった
さすがに、楓さんが出社する月曜と木曜ばかり休むわけにもいかず。


代休は消化したけど、その後は年度末が近いってこともあり、休む雰囲気ではなかった。


楓さんとは、仕事以外の会話はしなかった。


もちろん、ふたりきりで会うこともなかった。


3月に入ったある日、お昼休みに女子トイレの個室から出ようとしたら、他部署の女子社員の会話が聞こえてきた。


「ねえ、本田さんやっぱりカッコよすぎなんだけど」


「だよね、背も高くてイケメンで仕事もできて、欠点ないし」


「彼女いるんだろうなー」


「この前、カナが聞いたら『結婚を考えてる人がいる』って答えたんだって」


「そうなんだ、ショック~」


「まあ、仕方ないよね」


「うちら庶民には縁がないってことだよね」


話し声が遠ざかっていき、私はやっと個室から出られた。


『カナ』って名前が聞こえたってことは、営業事務の派遣さんたちの間で話題になってたんだ。


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