イジワルな彼とネガティブ彼女
「だいじょうぶか?」


「ふえっ、だ、だいじょうぶです・・・」


私は号泣してしまい、楓さんからあきれられていた。


ロビーの椅子に座って泣いている私は、まわりからは『別れ話がもつれて男に泣かされてる女』みたいに見えたのかも。


「まいったな」


楓さんは、さっきからなぜか落ち着かない。


「すみません、ちょっとお手洗い行ってきます」


涙を拭いてメイクをなおして、楓さんのところに戻った。


「お待たせしました」


「じゃあ、行くか」


楓さんは、意外だけど、手をつなぐのが好きみたいで。


まるで包みこむように、大きな左手で私の右手をにぎってくれる。


「ちょっと行きたいとこあるんだけど」


「うん」


楓さんは、映画館を出て、表通りを歩いてゆく。





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