イジワルな彼とネガティブ彼女
心の中だけで呟いたつもりが、普通の声でしゃべっていた。


「俺の友達に歯医者がいるから、紹介する。


俺が悪かったんだし、費用は払わせてもらうよ」


「結構です、今日のプレゼンには間に合いませんから。


マスクしてやりすごします」


あまりの恥ずかしさに、消えてなくなりたかった。


よりによって、こんなカッコいい人に笑われるなんて。


やっぱり、私ってツイてない。


残っている力を振り絞って、自転車を思いっきりこいだ。


「おいっ、待てよ!」


背後から声がしたけど、振り向かないで思いっきりこいだ。


呼吸が苦しくなってきても、口を開けたら笑われてしまうから、マフラーを鼻まで上げてごまかした。




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