イジワルな彼とネガティブ彼女
終業後に予約していた歯医者へ向かった。


本田さんに紹介してもらった歯医者だ。


今日で治療は一段落するはず。


お金も準備したし、忙しくなる前に治って良かった。


いざお会計となり、私はいそいそと銀行の封筒を取り出した。


「高橋さん、診察券のお返しです。


今回の治療は、これで終わりになります。


何かありましたら、いつでもいらしてください」


・・・えっ?


そこそこの大金が入った封筒を握ったまま、立ちつくす私。


あっ、私が支払いを済ませてないことを、この受付のお姉さんは知らないんだ。


「すみません、治療費をまだお支払いしていませんが」


私のセリフに、お姉さんが慌てて『失礼しました、こちらの金額になります』なーんて言って、明細書を差し出してくるに決まってる。


なのに、お姉さんはニッコリ笑顔で、


「治療費はすでにいただいていますよ」


私の妄想を打ち砕くことを言った。


頭の中は、ハテナマークであふれかえってる。


するとそこに、院長がひょっこり顔を出した。


「高橋さんお疲れさまでした。


費用なら、この前あいつからもらってるから、心配しないでね」


「あの、『あいつ』って・・・」


「楓だよ、本田楓」




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