狼陛下と仮初めの王妃
やっとの思いで声をあげると、腕の中から解放された。
「ああ悪かった。つい、力が入ったな。平気か」
「はい、大丈夫です」
今のは多分、民の代表として謝られたのだろう。
コレットがそう結論付けていると、膝裏に腕が差し入れられ、ふわりと抱き上げられた。
そのままずんずんベッドに近づいていき、焦るコレット。
「ま、まさか、なんですが。陛下も、一緒に寝るんですか?」
「もちろんだ」
シャッと音を立てて天蓋のカーテンが開けられると、クッションの傍に置かれた花の香りがコレットを包んだ。
ギシッと音を立てて陛下が隣に寝そべって、心臓がドクンと跳ねる。
「抱かないが、私も男だ。触れたとしても、許せよ」
「え、あの、それは……困ります」
そう言ったそばから陛下の腕に捕らわれてしまい、抱き寄せられてドキドキするコレット。
「今夜はこのまま寝るぞ」
陛下の吐息が額にかかり、その部分から熱が広がっていくよう。
こんなの眠れる気がしないが、陛下は既に寝息を立てている。
きっと政務などで疲れてるのだろう。
体に絡まっている腕をほどいて起こしてしまうのは忍びなく、捕らわれたままとなる。
人生はじめての男性と過ごす夜は、なかなか寝付けないまま更けていった。