狼陛下と仮初めの王妃


「コレットさま。今日は一段とお綺麗ですー!」


コレットの身支度を整え終わったリンダは顔をほころばせた。

女性の目から見ても、王妃となった主は昨日までと雰囲気が違うのだ。

今までは無邪気というか、少し幼く感じるところがあった。

けれど今朝は……。

うつむき加減で頬を染めて立つ姿は、可憐でとても美しい。

艶が出たと言うべきか、男性に愛されるとこうも変わるのかと感心するほどだ。

リンダが部屋に入ったとき目にしたのは、透けるカーテンの向こうでコレットに覆い被さっていた陛下の姿だった。

まだ純潔なリンダには夫婦の営みは想像の範囲でしかないが、昨夜も朝も、陛下に大切にされたのだと思う。

だって、ベッドからおりてきた陛下の目は普段の二倍は優しくて、リンダにかけた言葉はコレットを気遣うものだったのだ。


『朝食は十五分遅らせるから、ゆっくりでいいぞ』と。


この分ならきっとご懐妊はすぐ!

かわいい王子か王女のご誕生は一年を待たないはずだ!

勝手に想像をめぐらせれば、あたふたする未来の自分の姿があった。

これは、ひとりでは主の身の回りのお世話が難しくなる。

そもそも王妃付きの侍女がひとりというのが間違っている。

ナアグル家の奥方にだって複数の侍女がついていたのだ。

リンダは、さっそく増員を願い出ることを心に決めた。



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