狼陛下と仮初めの王妃
結果、騎士団全員がこの場に、陛下の元に集まってきた。
陛下は腹を据えて騎士団を動かすことを決め、満月の下で皆とともに剣を翳し、国を立て直す誓いをした。
この時暗躍した頼りになる参謀とは、もちろんアーシュレイのことだ。
「ここは、私にとって、始まりの場所だ」
「陛下の、大切な場所なんですね」
そんなところにコレットは連れてきてもらい、彼の心の内を話してもらえた。
瞬く間に内戦を収めてしまった狼と呼ばれる陛下も、悩み迷いながら立ち上がったのだ。
それは決して簡単なことではなかったと思う。
コレットは改めて陛下を尊敬し、彼が国王陛下である限り国は平和なままだと確信したのだった。
馬を引く陛下とともに青紫色の野原に戻ると、アーシュレイとリンダが話をしているのが目に入る。
コレットは言葉をかけずにそっとしておき、青紫の花を摘み始めた。
城に帰ったら部屋に飾るつもりだ。少し多めに摘んで、陛下の執務室にも飾ってもらおう。
そんなことを考えながら積み続け、手の中に収まりきらなくなって立ち上がったそのとき、剣を抜きながら猛然と走ってくる陛下が目に入った。
「え……?」
「伏せろ!」
叫びながらコレットの前に飛び込んできた陛下が、剣をヒュンと一振りした。
同時にキン!とはじけ飛ぶような音がし、風圧で青紫の花びらが散ってひらひらと舞った。
黒衣につく青紫の花びらの可憐さとは裏腹に、陛下の背中からは炎のような殺気が立ち上っている。