狼陛下と仮初めの王妃


謁見の間には、エドアール到着の報せを聞いたサヴァル陛下とコレットが玉座に座っている。

威厳たっぷりに堂々としている陛下の隣で、コレットは緊張した面持ちでいた。

今日は薄い桃色でレース飾りを控えたシックなドレスにし、豊かな髪はふんわりとまとめてティアラをつけてある。

耳にもデコルテにも宝石をつけ、甘さの中にも大人っぽさのあるスタイルは、リンダとマリアが腕によりをかけたもの。

大人の陛下の隣にいても、年齢差をそれほど感じさせない仕上がりになっている。


『君は華やかにしていてくれ』


事前にそう言っていた陛下はコレットを見た瞬間に柔らかい表情になったので、特に何も言わなかったが装いとしては合格だと思われる。

あとは、そつなく社交をこなすのみだ。

けれど、これが一番の問題で……コレットは謁見の間を見渡した。

玉座近くの両脇には帯剣をしたアーシュレイほか三名の騎士が控えており、書記官と各大臣方は壁際に並んでいる。

重々しいけれど、どことなくそわそわとした空気が流れていて、皆それぞれの立場で緊張している様子。

陛下だけはいつもと変わらないように見え、コレットは、さすが度胸があると感心していた。

自分も陛下を見倣って凛とした姿勢でいたいけれど、なにぶん初めての謁見の間の玉座。

しかも初めての外交で、相手は隣国ハンネルの王太子だ。


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