狼陛下と仮初めの王妃
「だから、城の秘密も、彼から教えてもらえるほどに親しかったんだ。一緒に城内を冒険したりして、怪我もして、よく爺に叱られたな……誘われて、禁じられた書物を見ようとしたこともある」
「ええ!?それで、エドアールさまは見たんですか?」
「いや、そのときは、書庫までは行ったが、すんでのところで私が止めたんだ。だって、禁じられたものなんか、ちょっと恐ろしいだろう?呪われてるかもしれないし、何が起こるか分からないじゃないか。そう言ったら、彼は、臆病だなーって笑っていたよ」
エドアールは、思い出したように笑う。
コレットは、禁じられた書物が呪われていると考えたエドアールに親しみを感じていた。
だってコレットも、ミネルヴァに聞いたときはそう思ったのだから。
「そうなんですか。すごく、仲が良かったんですね」
「ああ、彼は好奇心旺盛で、いい男だった。もう会えないのが、本当に、残念だよ」
昔を懐かしむように話すエドアールの表情がスッと変わり、コレットに一歩近づいて声を潜めた。
「本題に入るよ。あなたは、ガルナシアの王族について、なにか変だと思ったことはないか?」
「変って……それは、どういう意味ですか?」
「先代ユーリス王の父君が若くして亡くなり、母君はあとを追うように亡くなっている。そしてあなたも知ってる通り、ユーリスも、だ。わずか数代の間に王族が急激に衰退した。おかしいと思わないか?」
疑問を投げかけてくるエドアールの真剣な表情を見つめつつ、コレットは頭の中で懸命に考えた。
年表にはそれぞれ死因が書かれていたが、先代以外の原因はよく覚えていない。
でもたて続けに人が亡くなるのは、確かに変だと思う。