狼陛下と仮初めの王妃
皆からどっと笑いが起こり、リンダはちょっぴり頬を染めて、陛下とコレットを見つめている。
コレットは頬を染めてうつむき、陛下はそんな彼女を愛し気に腕の中へ入れた。
いつの間に用意したのか、ニックは騎士団の皆に祝いの葡萄酒をふるまい始めた。
うれしそうなニック夫妻やリンダたちを眺めながら、コレットはふと疑問に思った。
「陛下、もしもわたしがプロポーズをお断りしたら、どうましたか?」
「そうしたら、無理やりさらっていたな」
「え……!?」
陛下は紳士的な態度でプロポーズをしてきたのに、意外な言葉で驚しまう。
そんなコレットに、陛下はこっそり耳打ちをした。
それを聞いたコレットは、プッと吹き出してころころと笑う。
まさか、陛下がこんな言葉を用意していたとは、思っていなかったのだ。
『こんなに私に惚れさせておいて、今更王妃にならないとは許しがたい。よって、一生の妃を命ず』
「陛下、これは、わたしはまた罪を犯したことになるんですね?」
「そうだ。言うなれば、私の心を奪った罪。一生のお沙汰を命じるところだった」
コレットは、陛下にミルクをかけてしまったことを思い出していた。
お沙汰で始まった恋は、一度は終わりを告げられたけれど、今こうして叶っている。
人生はいつ何が起こって、どう変わるのか分からないものだと、哲学的なことを考えるコレット。
でも間もなくして、この結婚は、ほぼ計画的だったことを知らされたのだった。
葡萄酒を飲んで少し酔った様子の、腹黒いアーシュレイにしれっと。
「あなた、自分が王妃として育てられていたこと、全然分かりませんでしたあ?」と──。
【完】