狼陛下と仮初めの王妃


だがコレットは、そんな考えを遥かに凌駕してきた。

アーシュレイの鬼のような教育に耐え、礼儀からダンスまで身に付け、日に日に貴族令嬢らしくなっていった。

すでにあの頃、サヴァルはコレットに惹かれ始めていた。

婚儀後に行われた食事の席での出来事は、今思い出しても爽快な気分になれる。


窓から外を見やれば、はるか向こうに黒々としたアルザスの山々が連なっている。

あの山に、ニックの牧場がある。

コレットは今何を思い、どんなふうに過ごしているのか。

今すぐにでも迎えに行き、抱きしめたい。

そんな逸る気持ちを振り払うかのようにカーテンを閉め、サヴァルは自室へ戻った。


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