狼陛下と仮初めの王妃


「陛下、準備が整いました!」


牧場へ向かうべく、騎士服を身に着けたサヴァルが城の正面入り口に出れば、ピシッと姿勢を正した騎士団長が快心の笑顔で報告をしてきた。

サヴァルはなにも命じていないが、どうやら待ち構えていたよう。

すぐに出発できるように、準備万端整えられていた。


「貴様らは、本当についてくるつもりか」

「もちろんです!お相手は王妃となるお方。とても陛下ひとりにお任せできません!!」


渋い表情をするサヴァルに対し、騎士団長は真剣な顔を見せる。

過去に二度も襲われたことをあげられて、もう三度目はないと言われればごもっともで、サヴァルにはぐうの音も出ない。

そして、侍女のリンダまでもが一緒に迎えに行くと言って譲らない。

大きな鞄を持っているが、中には純白のドレスが入っていると言う。


「恐れながら、陛下。告白が成功したあかつきには、あちらで本物の結婚式を挙げるべきだと思うのです!」


リンダの瞳が、燃えるように輝く。

アーシュレイも含めた騎士団員たちと相談して段取りを整えたと、リンダはサヴァルに力説する。


「コレットさまも、ご家族同然の皆さまも、きっとお喜びになられますわ。皆に祝福されて式を挙げるのは、女性のあこがれなんです」


リンダは胸の前で手を組み、夢見るような表情をする。

恐らくリンダの言うことは本当で、コレットも喜ぶのだろう。


「ならば、よろしく頼む」


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