狼陛下と仮初めの王妃
パタンと扉が閉まった途端、コレットはへなへなとその場に座り込む。
ペールグリーンのドレスが、ふわりと花のように広がった。
「まさか王妃だなんて……」
いったいどこをどう間違えて裁けば「妃」というお沙汰にたどり着くのか。
陛下の頭の中を覗いてみたい気持ちになる。
一時的とはいえ、王妃とならばお側にいることになるのだろう。
あの、恐ろしい狼陛下のお側に……。
コレットのうちひしがれる様子を見ていたメガネの騎士は、コホンと咳払いをした。
「あなたは、陛下に対して侮辱罪を犯しました。さらに服を染みだらけにしました。本来ならば投獄されて、服の弁償として科料されるところなんですよ?それが一時的とはいえ王妃となり、優雅な生活を送れるのです」
あなたは投獄プラス科料と仮の王妃とどちらがいいですか?と騎士はメガネをぎらっと光らせた。
冷静な物言いだが、脅されているような気がする。
コレットが何も言えずにいると、メガネの騎士はさらに言葉を続けた。
「あなたの容姿の美しさと、正直さを、陛下は見込まれたのです。これは、名誉に思うべきことですよ」
「わたしの、正直なところですか?」
「そうです。あなたは今日、ミルクのカメの数を誤魔化しませんでした。そこが、陛下の傍に置いてもいいと思わせたのです」