狼陛下と仮初めの王妃
あの争いは、先代の国王が若くして急死した時に始まった。
先代には子がいなかったため、次の王を決める際に有力者の勢力争いが激しくなったのだ。
長引き始めた争いに反王政派が便乗してしまい、内戦へと発展していった。
勢力は大きく四つあり、どれも力は同等で、長引く争いに誰もが疲れ『この内戦は終わらない』と諦めかけていた。
そのとき、新たな勢力が現れた。
現王サヴァル陛下率いる騎士団だ。
全員が黒衣を纏っており“黒の騎士団”と呼ばれた騎士たちは、圧倒的な強さをみせた。
瞬く間に各勢力を制圧していき内戦を終わらせたのだ。
その終戦の時、各勢力のトップが一堂に会して話し合いがなされたという。
国民には詳細が明かされていないが、その密議のあと、サヴァル陛下が正式にガルナシア国の王となった。
「こんな風にリンダが手に入れてくれた美味しいお茶を飲めるのも、平和になったおかげだわ」
コレットがしみじみと言うと、リンダも感慨深げにうなずいた。
「本当にそうですわ。陛下の、騎士団の皆さまのおかげです。でも考えてみますと、陛下は元々先代王直属の騎士団長でいらしたお方。ミネルヴァさまのような貴族方からすれば、気にくわないのかもしれませんわ。私たち庶民には、争いを終結させたヒーローですけれど」
「そう、よね……」
カメの数を誤魔化すようすすめてきた街の人たちは、騎士団のことを尊敬していた。