狼陛下と仮初めの王妃
妃のつとめ
婚姻前夜、コレットはいつもの部屋ではなく、三階にある客間で就寝することになった。
今まで使用していたお部屋は、婚約者のそれから王妃仕様に変更中で、明日まで立ち入り禁止になっている。
「もう、明日なのね……」
コレットは、ベッドサイドにあるテーブルに置かれた紙を手に取った。
これは明日の予定が書かれているもので、今朝の食事の席で陛下に渡されたもの。
『君は覚えなくてもいい。目を通しておいてくれ。ただ私の横に立っていれば、それで十分だ』
陛下はそう言っていたけれど、そういうわけにはいかない。
コレットは何度も読んで復習し、頭に入れていた。
だけど、読むたびに題名の“婚姻の儀式”という文字がやけに大きく見えてしまう。
いよいよ明日、偽物王妃になる。
そう思うと、言い様のない気持ちに襲われる。
陛下に妃となるよう申し渡されてから一週間。
これまでは急激な環境の変化とアーシュレイの教育についていくのに懸命で、先のことを深く考える余裕がなかった。
今はこれと言ってすることがなく落ち着いているせいか、あれこれと不安なことばかりが頭をもたげてしまう。