狼陛下と仮初めの王妃
いそいそと祝いの準備を始めるニック夫妻は、お妃になるのがコレットだとは夢にも思っていない。
だって、彼女が城に連れていかれた翌日に、『コレット・ミリガンには“城で奉仕”のお沙汰が下った』との手紙が届いているのだ。
だから侍女として務めを果たしていると思っており、ニックもアリスもキツイお沙汰でなくてよかったと、盛大に喜んでいた。
「もしかしたら、コレットは王妃さまの侍女をしているかもしれないねえ……」
アリスは棚から葡萄の蔓で編まれたリースを取り出した。
金銀のリボンを結んだだけの極シンプルな飾りで、陛下の即位式の時に使用したもの。
新品じゃないため申し訳なさが胸をよぎるが、急なことだから仕方がないと自分を納得させる。
そしてそれを家の入り口に掲げて空を見上げた。
「今日はきっといい一日になるね!」
霧は晴れ始め、牧場には青い空が顔をのぞかせていた。