狼陛下と仮初めの王妃
あとの予定は、儀式の見届け人たちとの会食のみ。
コレットは迎えに来たリンダとともに身支度部屋に戻り、純白のドレスから紺色のシンプルラインのドレスに着替えていた。
シンプルなのはラインだけで、胸元と袖口と裾に極小の宝石が縫い込まれている。動くたびにキラキラと光を放つ、とても美しいドレスだ。
それに合わせて髪もエレガントにまとめられ、ドレスに合わせた宝石の髪飾りがつけられた。
儀式のときの清楚さとは違い、かなり大人っぽい姿である。
実年齢よりも上に見え、コレットは気恥ずかしさを感じていた。
でもこれなら、大人の陛下と並んでも釣り合うと、自分でも思う。
「コレットさま、まもなく陛下が迎えに来られますわ」
宝剣と鍵は、ブーケが入れられていた白い箱の大きさがちょうどよく、布を敷いて仕舞ってある。
会食の席にまで持っていくわけにいかず、箱をリンダに託すことにした。
「リンダ、これをお部屋まで運んでおいてほしいの。陛下からいただいた、とっても大切なものなの」
「はい、コレットさま。しっかり、心得ましたわ」
箱を持ったリンダは神妙な顔つきになり、少しそわそわしている。
対するコレットのほうは、大切な物の落ち着く場所が決まって安心し、ホッと息をついた。
すると次に頭によぎるのは、さっきの陛下の様子だ。
あんなふうに背を向けられたのは初めてのこと。
コレットの言動のどこがいけなくて、機嫌を損ねてしまったのだろう。
執務室に置いてきぼりにされるくらいだから、とっても悪いことをしたに違いない。