待ち人来たらずは恋のきざし

いや、無い無い。そんな無茶な話は無いわ…。
いきなり認めて泊めるなんて…とんでもない。駄目だから。


「待ち人って…。
待って。そんなの、一方的な押し付けです。
あのですね、だから泊まるって言われても、それは困ります。
とにかく駄目です。だから泊めません。
帰ってください。
待ち人については、確かに長年ずっと待ってます…現れたらいいなとはずっと思っています。
だからといって、それを話したからって、だったら俺がなってやるよみたいなのは違うと思います」

貴方だって…どういう気で…。……からかってるの?

「他に当てでもあるのか?」

「あ、当てって…それは…まだ…。ある訳ないです。
だって、当てがあるとか現れていたら、会ってる訳だから、待ち人が欲しいなんて、…貴方に言わない…」

「だから、俺」

「えっ?」

「俺。居るじゃん、俺に会ってる」

…どういう理屈から導いた答えになるのかしら。
会ってる?…え?何だか、…よく解らなくなってきた。
会ってるから、この男がそうでいいの?

…えー、…意識の問題なの?…えー?…私が鈍いの?『待ち人』はこの男なの?それは間違いないと思ってもいいの?

「…とにかく。簡単には泊められないです。
そんなの当たり前ですよね」

「だからって、こっちも簡単には引かない」

「え?」

「あんた…ごめん。景衣の事、気になるから」

「え」

「何だか危なっかしくて放って置けなくなったんだ」

俺らは…バーでたまたま居合わせただけなんだけどな…。直接言葉も交わしてもいない。だけど。
実際、健気と言うか…。あの時…、気になったんだ。


…思考が停止しそう。私、いい大人なんです。

「…ねえ。…貴方、保護者にでもなったつもり?」

「は?」

「危なっかしいから…弱いから、守るって事?」

「…あのなぁ…はぁ。
そういうの、引っくるめてって意味だよ。
解らないか?」

…解らないわよ。

「だからって泊めないですよ?」

…。

「景衣…」

え、え?…何?

ちょ、ちょっと、何…この雰囲気。

ぇえっ?な、によ。
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