待ち人来たらずは恋のきざし
ほぼ毎日、決まった時間に起き、職場に向かい、決まった内容の仕事をこなす。
週の中頃を過ぎて来ると、何となく、気の抜ける週末が待ち遠しくなって来ている。
そして金曜の仕事を終える頃には、あーもう、何もしなくていいー、…そんな気持ちになり部屋に帰る。
…何もかも、気も、身体の力も…抜け落ちる。
そんな日を繰り返していたら、あの男と連絡を取らずに過ごしていた事に気がついた。
もう、一月近くも何もしていない。
来ないと解っていて来ない、心配しないでいい状況に居るからかも知れない。
…本当のところは解らない。連絡をとって無いのだから何らかの病気になっているのかも知れない。
何となくだった。
携帯を手にしたら、メールを送っていた。
【オムライス、作るかも】
変なメールだと自分でも思った。
しかも、今のところ、作る気持ちにもなっていないのに。
身体が怠い、眠い。あぁ…生理が近いんだ。
身体も冷え気味だし…はぁ。
迂闊なメールをしてしまった。
これで作らないといけない事にでもなったら…。
今のところ返信は無い。
来る?と聞いた訳じゃないし。
こんなの…好きな物を引き合いにして、まるで冷やかしているようでもある。
一応…ご飯だけ炊いておこう。
…ちょっと、可愛いところもあるじゃない、私。…もしもに備えてよ。
確認した。鶏肉も、卵も玉葱もある。
勿論、ケチャップはある。
もしも突然来たら、作れるのは作れるんだから。
だけど、来るなら来るって、言ってから来なさいよね。
【オムライス、食べに行く。泊まる】
…あ、…来るって。…泊まるって。
…久し振り過ぎるのよ…馬鹿。…何よ。何、返してきてるのよ。
【馬鹿、何してたのよ】
【仕事】
…。相変わらずね。全然、解らない。仕事…そうでしょうね。
思わず勢いで送り返したけど、これ以上は…不毛なやり取りになる前に止めよう。聞いても話にならないのは解っている。
どうせ今から来るんだ。
オムライス…作らなくちゃいけなくなった。
ピー、ピー、…。
ああ、ご飯、炊けた。