待ち人来たらずは恋のきざし

「俺も、基本、いつもいつも一緒に居なくていい方なんだ。
多分、それを言ったら、人は俺の事を我が儘な奴だと言うと思う。
相手に合わせられないから、とかな」

「だったら、私の言った事も我が儘ですよ。
時々…、飛ばし飛ばしで会うくらいが丁度いいと思っているから。
一緒に居るのが嫌とかでは無いんです。
…基本ヤキモチ妬き…だから、寧ろ居たい方だと思う…。
…私、さっき言ったけど、貴方よりだいぶ年上なの。
…ごめんなさい、知ってたかも知れないけど、37なのよ?」

こうして背中から包まれていると何でも話せるような気がする。
大事な事は小さい声になるけど。

「ん。いいよ。俺も37になるし」

…七年後にね。

「…その時は44になってる」

「ん、俺も44になる」

そんな事じゃないの…追いつかないから。

「…その時はもう51…」

はぁぁ、五十代って、直ぐ……だ。
その頃も、まだ一緒に居てくれてるかな…。

「ずっと追い掛けて行くからいいんだ。ずっとだ。景衣の毎日を大事にするから。
さっきの妊娠…子供の事なんだけど。
ごめん。女の人はデリケートだって話だったのに。俺、軽はずみだったよな。
景衣はさ、勿論調べた事は無いだろうけど、妊娠出来るか出来ないとかさ。
俺、さっき、妊娠は誰でも当たり前に出来るみたいに聞いたから、悪かったよ」

「ううん。病院で調べて見た事は無いです。…機会が無かったから。
断定は出来ないけど、普通だと自分では思ってます。
だから妊娠は出来る身体だと思ってます」

健康な身体としての話だ。解らない話ではある。
勿論、年齢が高くなるにつれ、可能性も低くなってはくる。
それも解っている。

「ん。俺も。調べて見た事は無いから。普通だと思ってるだけだ。
今まで考えて見た事は無かったのか?子供の事」

「…それは…具体的になんて…相手が居なかったもの…」

「そうだったな。失礼失礼」

肩に顎を乗せてギュッと抱きしめられた。

「もう…知ってて聞いてるくせに」

「欲しい時に、希望通りに妊娠出来るかどうかは神のみぞ知る、みたいなもんだけど。
景衣が欲しいなら、俺はいつでも…どのタイミングでも構わないから。
逆に欲しくないなら、それでもいい」

え?

「ちょ、ちょっと、待って?…どういう関係?」

「ん?俺達の関係?
急かしたりしないけど、いつかは結婚する関係」

「あ…」

「を、見据えて、こうしているつもりだけど?
何となく、暮らし方のスタンスは解ったし。
無理せず、困る事は何も無いと思ってる。
あとは知りたい事はその都度話せばいいだけだ。
あー、まあ、形にはこだわらないよ?
結婚じゃなくても、ずっと一緒に居たらいいだけだし」

「…あのね…」

「…暫く会わない間に、他に誰か当てでも出来たのか?
それとも、俺は、一緒に飯食って、するだけの相手で、いつかは終わり?
それでいいくらいの男なのか?」
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