待ち人来たらずは恋のきざし
慌てた訳じゃないけど、ちょっと後からバスタオルを巻いたままの格好でリビングに行って見た。
…居なかったりして。
え?姿が見えない。
これって…居ないんじゃないの?
こんな短時間に帰ったの?…え?本当に居ないの?
ベッドに行ったのかな。
ドアを開けた。
布団が少し盛り上がっているのは中に篭っているのかな。
上から押して見た。
…潰れた。ボスッて…虚しい音がした。
って事は、もう…どこにも居ない。
…居なくなっちゃった。
…帰ったんだ。
居るって言ったのに。
「居ないじゃない、こんなの…嘘つきって言うんだから。
…一緒に出たら良かった」
呟いてベッドに腰を下ろした。
ズレていた上掛けを無意識に広げるように直していた。
はぁ…ちゃんとパジャマを着なくちゃね。
時間差はあっても、追い掛けるように出て来てしまったから、何も身につけていない。…フ。
寒い…肩が冷えてる。早く着なくちゃ風邪をひいてしまう。
「もう…馬鹿…」
「景、衣…」
…え、…え?
「見つけられなかったのか?そこに居たのに」
…温かい。
男が腰掛け後ろから包み込むように抱きしめていた。
「だから、俺は嘘つきなんかじゃないだろ?」
…はぁ、…もう。
「酷い…。どこに?」
「ドアが開いたら自然に隠れる場所に居た。そこ」
ドアの横を差された。
ちゃんと閉めて振り返っていたら発見できていた場所。
慌てて開けて、そのままだったから、私が隠してしまった訳だ。
…隠れん坊に協力してしまったのね。
「…絶対に居てよ、なんて聞かされてるのに、居なくなる訳がない…。
上がって来るのを待ってた」
…何だか…甘い、凄く。
「寒いからベッドに入ろう…」
「…うん、あ、でも」
よっ、と。
もう横にされていた。
「今日はさ、絶対帰る訳ない…。
ただ泊まるんじゃない。ずっと居たいと思った、だから居るんだ。
景衣が可愛いから、ずっと居る。ずっとこうして居る」
抱きしめられた。
はぁ…どうやらこの男のどこかに、今日は響いたモノがあるらしい。
「玄関の靴、見なかったのか?」
あ、…もう、そうよ。言われてみたら、一番に見れば良かった。…もう、全然機転が効かない。
それにスーツだってあったはずなのに。
「ゔー…はい」
「詰めが甘いな…。いつも、…いつも。
景衣らしいけど…ん」
言い終わると同時に唇が触れた。
バスタオルの重なりを開けられ、身体が重ねられた。