待ち人来たらずは恋のきざし


【元々このつき合いは俺きっかけで始めた事だ。
景衣の気持ちを無視して強引にな。

景衣の気持ちは受け身だった事になる。
自分から好きになったのとは違うだろ?
それがどこか、景衣の頭が納得してないんじゃないのか?
だから解らないってなるんだと思う。

だったら自発的に人を好きという感情が芽生えるまで、ずっと気長に待つしかないんじゃないのかな。

好きって、無理して、選んでまでするもんじゃないだろ】

はぁ、こんな事、好き好んで言いたい訳じゃない。

何も無かった訳じゃないから完全に元に戻す事は出来ない。
だけど、これで景衣は楽になれるだろ。

今のまま続けていても、多分その内、景衣は会わなくても平気な気持ちになって行くだろう。

何故だ、何故だって、俺も悩まないで済む。

…。

満腹で食べられないのとは違う。

食べたくない物が目の前にあっても、それは手を出さないモノだ。

…フ。何も無くて、死にそうになって、やっと口にするのかな…。

だったら、景衣には恋は必要の無いモノという事になるのか…。
いや、わざわざ目の前のこれを口にしなくても、別に好みの食べ物があるかも知れないと思うかもな。…。…あるよ。
それに気付けば。見つかる。

景衣の心の奥までは解らない…。

俺に合わせて…じゃれていただけだったか。

はぁ。


【解りました】

…フ。
解ったんだ。

リセット、するんだな。


【知らない振りをお互いに装ったけど、俺と景衣のところの課長は会っているんだ。
ごめん、俺が会いに行った。どんな男か知りたかった。
顔くらい知っておきたいと思ったんだ。その程度にしか会ってない。
でも、内緒で会って悪かった。
言わなくてごめんな】


やっぱり…知らない仲では無かったのね。

何を話したのだろう。

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