待ち人来たらずは恋のきざし
「まあ、様々だな。
自分の中でだって、凄く好きって日もあったり、特別、普通だったり、色んな日があるだろ?
例えばさ、喧嘩して、ちょっとだけ嫌い、ってなっても、根本まで嫌いになってる訳じゃない。
そんな日も、好きは、好きだ、無くなりはしない。
俺だって、そんなに会わなくても平気かもって言いながら、凄く会いたくなる日には押しかけるって言ってただろ?
どうしようもない時は連絡もしないで、景衣の帰りを…じりじりした思いで待ってる」
あ、もしかして、今夜…、そんな思いになったから待っていたの?
「自分の事が解らなくなるって、人を好きになってるからだこそだと思うんだ。
理屈っぽいか?理屈っぽいな…」
「じゃあ、…解らないって言っててもいいの?」
「いいと思う。だってさ、景衣は解らないって言いながら、俺の事は好きで、課長には気持ち行かなかっただろ?
今くらいの強さの好きが、景衣のマックスなんじゃないのかな。
どうだ?…あ、聞いても、解らない、な」
「はい、解らないです」
「嫌いになったら言ってくれ、それでいい」
「え…」
「それでいいと思う」
「いいの?それで?」
「…いいよ」
「だったら嫌いにならないと思う。
だって…貴方は私の事、何でも解ってる。
頼れる人だと思えるもの。
何も打ち明けてないのに何だか私の事、知ってる」
「景衣…一緒に居よう」
「え?」
「一緒に暮らさないか?
同じ部屋に住んで、お互いの部屋をきっちり分けて、そこは干渉しない。無断で入ったりもしない。
だけど一緒には居るんだ。
そんな暮らし方ってどう?丁度いいと思わないか?
会いたくなったら部屋を訪問すれば会える。コンコンってノックしてさ。
勿論、拒否もOKにして。
自分の部屋に鍵も掛けるようにしておけばいいし。
同じ部屋の中に居るって事で、心配もしなくて済む。
もっと細かい、具体的な事は始める前に詰めて話せばいいけど。
…どうだ?こんなの」
「…うん、干渉しないならいいかも知れない。
同じマンションの隣同士っていうのでもいいかも」
「そうだな。間取りとか、部屋数とか、まあ…家賃とか、検討して一番いい方法を考えようか」
「はい。…あ、…もうこんな話…」
「いいんじゃないの?
嫌なら解消。何事も、やってみなきゃ解らない、だろ?
楽に考えよう、楽に。
あれもこれも、夢ばかり話をしてても仕方ないからな。
若い子みたいに理想ばかりを話していたら大人は進まない、喧嘩にならない喧嘩になる。
現実に添った話をしないとな」
「はい、…そうかも」
もう、リセットはあって無かったようなものになる。
でも…リセットしよう、そう言って、考え方を改めさせてくれたのかも知れない。
これってこの男の事を過剰評価?良く見過ぎ?
そうでは無いと思う。私の事、凄く考えてくれている、そんな気がしてくる。