待ち人来たらずは恋のきざし
・待ち人は貴方、家移り安し、向吉。
リセットしようから、直ぐリセットして、暮らし方まで何となく具体的な話をした。…なのに、依然何も変わりがない。
盛り上がって、流れで一気に決めないというのが自分達らしいのかと言えばそうなのかも知れないけど。
変わらずお互いがお互いのマンションに住み、たまにあの男が現れる。
部屋の前でじっと待っていたり、いきなり駆け寄って抱きしめたり。
待ち方の違いは、あの男曰く、好きの“むら”だと言う。
それは言われなくても解る。気持ちは行動に現れているから。
私にして見れば、よう、お帰り、お疲れと言われると、嬉しいし、やっぱりほっとする。
もしかしたら、ずっとこんな感じでいいんじゃないのかとも思ってしまう。
不便さみたいなモノも特に感じないし。
でも…、全てを干渉するつもりはないけど、不安とか心配は過ぎる。
私の知らないあの男の時間があるからだ。
何日も会っていなければ、何をしているんだろうとか、体調は崩してないだろうかと思ってしまう。
携帯で連絡は取れても、例えば、大丈夫だという言葉が、本当に大丈夫だと言う意味で返されているとは限らないからだ。
そう思えば、“干渉しない干渉できる距離”で居た方がいいに決まっている。
…。
【ファミリー向けくらい広くとは言わないけど、部屋数のあるマンションを探してみませんか?】
何も考えず、そうメールを送っていた。
【待ってたよ】
…え?
【景衣がその気になるのを待ってたんだ。
こっちから提案しても、いいかもって景衣が頷いても、一緒に暮らすってなると、景衣から自発的に言ってくれないと、ずっと続けていけないものだろ?】
…あ、…私からの連絡待ちをしてたって事?
ずっと言い出さなかったらどうしてたんだろ。
【じっと待っててくれたの?】
【待ってたよ。首を長〜くしてね】
…そうだった。いつ部屋に来ても、男はこの話、あの時からずっと何も触れてこなかった。
だから私も話さなかった。
その態度が、ただ、私が、あの男に部屋の話を合わせていただけだと思われていたと言う事だ。
…あぁ、だから私から自発的に言って来なきゃ…駄目だって事だ。
【俺は俺で、もう決めてある部屋があるんだけど、見てみないか?
別にそこに決めてしまう訳じゃない。
時間あるなら今から行くけど】
え、夜よ?無理なんじゃ無いの?
【時間なら大丈夫だけど】
【じゃあ、まず景衣の部屋に行くから、待ってて、すぐ行く】
【わざわざ迎えに来なくても、どこかで待ち合わせた方がよく無いの?】
【大丈夫だ。とにかくそこで待ってて。もう俺出てるから】
え?あ、もう?…。直ぐ来ようとしてるところを見ると、余程、いつだいつだって、言って来るのを待ってたのね。…フフ。
【解りました、待ってます】
行ったり来たり、大変じゃないのかな。