ヤンキーやめます!
「よければあなたも撮りましょうか?」
爽やかに笑う彼の笑顔を見たら、断ることなんて出来ない。
「よ、よろしくおねがいしますっ」
こんなに動揺してるのも、こんなにしっかり敬語を使っているのも初めてだ。
ジャージのポケットから画面がバキバキのスマホを取り出して彼に渡す。
綺麗な手で受け取った彼は画面が割れていることなんて気にしていないようにカメラを構えた。
こんな風に写真を撮ったことなんてないから、どんな顔をしてどんなポーズをとればいいかわからない。
「行きますよ~、はい、チーズ」
あたしがつったっている間に、カメラのシャッター音が聞こえて、彼が近づいてきた。
「うん、ブレてないと思う。それじゃあ、入学式、頑張りましょう!」
あたしの手にスマホを置いて、楽しそうに彼は去って行った。
いや…入学式頑張ろうってなんだよ。
彼の最後の言葉に、フフッと笑いがこぼれた。
撮ってくれた写真を見ると、棒立ちのままむすっとした表情の、この雰囲気に似つかわしくないあたしが写っていた。
あの人の写真とは全然違うなあ…。
自分はこの高校にいていいのだろうか、という思いが戻ってきた。
そういえば、さっきはこんな気持ち忘れてたかも。