夜界の王
話を聞いていくなりデリックはどんどん顔を怒らせて、終わったころには今すぐグレンダの家に押しかけていきそうな勢いだった。
なんとかそれは説得してデリックは落ち着いたが、頭に血が上っていることが目に見えてわかった。
「あのいけ好かねぇばーさん、まさかそんなことをしてたなんて…。ごめんな、アーシャ。俺がもっと早く気づいてやれればよかったのに」
「いいの、デリック。話を聞いてくれただけでもすごく嬉しかった」
「これからはひとりで溜め込まずに俺に話せよ。お前、あんまり人に言えなさそうだからさ」
図星に黙り込んでしまうと、デリックは声を上げて笑い、くしゃりとアーシャの髪をなでた。
デリックとは2つしか年は違わないのに、大げさに子ども扱いされているようでなんだか恥ずかしくなった。
「も、もう帰らないと。部屋の掃除がまだ終わってないから」
「そっか、じゃあ送るよ」
「送るって、もうすぐそこよ?」
「いいだろ。俺がしたいんだ」
譲らないデリックに、アーシャは再び彼の優しさを感じて温かい気持ちになった。
自分のためにここまで怒ってくれる人がいたことに、アーシャは心が救われるような気持ちだった。
今までたったひとりで考えて悩んで、落ち込んでいたから。
でも、まだ自分には味方がいる。