夜界の王
アーシャはデリックの姿を見た途端に胸がどきっと高鳴った。
今会いに行こうと思っていた人なだけに、嬉しさが大きかった。
でもこんな時間に、こんなところでいったい何を?
グレンダへの挨拶は済ませたし、二人が会う理由がアーシャには思いつかない。
来ていたのなら声をかけてくれたらよかったのに。
眠っているだろうと気を遣ったのだろうか…。
何か違和感を感じる。
何を楽しそうに話しているのか、笑い声が聞こえてくる。
………なぜ、笑い声が聞こえるのだろう?
2人は仲が良かっただろうか?
いや、そんなことはない。
聞こえる笑い声は純真に会話を楽しんでいるのとはどこか違う、何か歪んだもののように聞こえる。何故?
わからないことへの不信感が募りだし、アーシャは息を潜めながら扉の隙間に耳を近寄せた。
中からはっきりとデリックの声が聞こえてきた。
「こんなにうまくいくとは思わなかったな。あんたには感謝してるよ、グレンダさん」