夜界の王
Ⅳ
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どれほどか歩いた頃、急に森がひらけた。
雑草が生えっぱなしになっていた森から一変し、人工的に整えられた草はらに出る。
アーシャは前方に目を向け、そこに現れた巨大な屋敷に息を呑んだ。
(なんて大きいお屋敷……)
そこには、まるで城のように夜闇にそびえ立つ屋敷があった。
森の奥にこんなものがあったなんて。
屋敷が空をも巻き込んで纏う雰囲気は、闇そのもののように陰鬱としていた。
上空には鴉たちが塵のように旋回し、金切り声でアーシャたちを出迎えた。
どことなく現実離れした、不気味な空間だった。
やっぱりなにかまずい場所へ連れてこられてしまったのだ。
アーシャは屋敷の巨大さとこの場の不快感に恐れ、身を強張らせた。
男はちらとアーシャに目をやり、腕の力を強めて抱き直す。
慣れた足取りで男は屋敷の門扉へと進んで行く。
槍が地面から突き出したような頑丈そうな門扉は、左右にどこまでも続いている。中央の巨大な屋敷全体を、この高い柵が囲んでいるのだろう。