秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
そのとき、部屋の扉がノックされた。
「コルネリアかい?」
誰よりも先にギュンターが反応し、扉を開けて招き入れる。
コルネリアは、中にいるエリーゼを見て顔をほころばせたが、すぐ公爵からにらまれるのに気づき、うつむいてしまった。
「エリーゼ嬢の隣に」
「いえ。あの、でも」
「コルネリア、来て」
ギュンターだけでなく、エリーゼにも呼ばれ、コルネリアはおずおずとソファに座った。
目の前の公爵がギリギリと音が鳴りそうなほどに歯を食いしばって肩を怒らせている。
「無事でよかったわ。エリーゼ」
涙ぐむコルネリアの頬には軟膏が塗られたガーゼが張られている。
エリーゼはそっとそこを触り、「あなたのほうが大変よ、コルネリア。せっかくのドレスだったのに、すっかり泥だらけね」と笑う。
「あ、ごめんなさい。借り物なのに」
「違うわ。責めてるんじゃない。こんなひどい目にあって……怖かったでしょう、コルネリア」
「それを言ったらあなたもだわ。誘拐なんて……何もケガはしてない? 嫌なことはされなかった?」
「私は薬で眠らされていたようなの。全然記憶がないのよ。さらわれたと思って目覚めたら彼が助けてくれた。不幸のどん底だと思っていたけど、一瞬で幸せに戻れたわ」
エリーゼがちらりと立っているヴィリーを見る。
ふたりの幸せそうな様子に、コルネリアはほっとした。
「さて。そろそろいいかな?」
パン、と両手を鳴らせたギュンターは、全員を見渡した。