秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


「まずはエリーゼ嬢の恋ですね。彼女は騎士団員のヴィリーと恋をした。しかし、バルテル公爵は、エリーゼ嬢に縁談を強要していた。そのため、エリーゼ嬢が駆け落ちを計画したところが始まりです。タイミングよく、クラウス王子殿下から仮面舞踏会の招待状が届く。背丈が近いコルネリア嬢と衣装を交換すれば、目立たずにかけおちを決行できると考えた。合っていますか?」


エリーゼが小さく頷く。


「おそらく、公爵は事前にこの情報を掴んでおられた。ですから最初から、二頭立ての大きな馬車と逃亡を阻止するための人間を用意していたのです。先ほど、エリーゼ嬢をさらった男たちは、本来ヴィリーをエリーゼ嬢から引き離すために用意した人材でしょう」

「…………」


公爵は黙ったままだ。ギュンターは一瞥して先を続ける。


「しかし、ヴィリーに駆け落ちの決心がつかなかったことから、エリーゼと彼は喧嘩別れをする。予想と違った動きに、とりあえずエリーゼ嬢だけは捕獲しようと、男たちは門番を気絶させ、エリーゼ嬢に薬を嗅がせてさらった。大事な雇い主のご令嬢だ。運びにくかろうとも、丁寧に抱きかかえていったことでしょう」

「あ」


ヴィリーがそれで、というように頷いた。
ギュンターは微笑んでそれに応えると、再び公爵を見る。


「ヴィリーは必死に追いかけたことでしょう。なにせ、不幸にすることが怖くて駆け落ちに応じられないほど大切な人が、どこの誰ともわからない暴漢にさらわれたのです。幸せを願ったつもりがより不幸にしてしまったようなものだ。追いつけなくなった時点で、すぐ戻ってきて捜索の許可を願い出たのでしょうね。それで馬車も遠くまで行かなければいけなくなった。図らずも誘拐犯になってしまいましたからね、捕まるわけにはいかない。指示を仰ぐために、公爵様のところにも報告がいったことでしょう」

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