秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「ここまで考えて矛盾がないということはこの線が正しいと思った。だから私は、ヴィリーに公爵ゆかりの土地を回るように指示を出した。見つけたならばこの屋敷まで誘導するように、とね。ここまで連れてきてもらったのは、証人が必要だったからだ。エリーゼを救い出したのは誰か。クラウス、お前はちゃんと見ていたよな?」
そこまで聞くと、クラウスは笑い出して手を叩いた。
「さすがだな、ギュンター。確かに、エリーゼ嬢を救い出したのは、ギュンターではなく王立騎士団員のヴィリー=アッカーマンだ」
「し、しかし、それはギュンター殿の指示だろう」
「指示したのは私でも、命を懸けたのはヴィリーです。彼にはエリーゼ嬢を娶る権利がある。公爵もお約束してくれたじゃないですか。こちらもちゃんとクラウスが証人になってくれますよ」
「く……くっ」
「エリーゼ嬢も無事ですし、ケガをした門番も公爵が医者に見せてくださいました。あとは頬を傷つけられ恐ろしい思いをさせられたコルネリアに謝罪してくだされば、公爵の罪は問いません。どうぞ、謝罪と、エリーゼとヴィリーの結婚の許可を」
「こんな成り上がりの小娘に……っ」
公爵の怒りはコルネリアに向かっていた。ギュンターは彼女を公爵の視線から隠すように前に立つ。
「謝罪してください。彼女は私が求婚している女性です」
「えっ」
コルネリアは顔を赤らめ、エリーゼは好奇心で顔を明るくした。
公爵は信じられないといったように目を見開いている。
「何故だ。こんな新興の伯爵家などに」
「遅くなりました、ギュンター様!」
そのタイミングで、息を切らせて部屋に飛び込んできたのはルッツだ。