秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
仮にも格上の公爵家に、一介の伯爵子息がする態度ではない。
コルネリアは慌ててギュンターを止める。
「ぎゅ、ギュンター様、やめてください。私は平気ですからっ」
「俺が平気じゃないんだよ、コルネリア。本当なら殺してやりたいくらいなんだから」
普段温厚な伯爵子息の物騒な発言を聞いて、バルテル公爵は彼の本気を悟った。
青い顔で、声を震わせながら頭を下げた。
「わ、悪かった」
「いいんです。頭をあげてくださいませ、公爵様」
コルネリアが恐縮したように頭を下げ、ギュンターをしっかりと見つめる。
「私がいいというんだからいいんです。よろしいですか、ギュンター様」
時に見せる真摯なまなざし。こちらがどういっても揺るがないであろう決意を秘めた瞳は、狂おしいほどギュンターを惹きつける。
「……まあ、あなたがそう言うならば」
「よかった。それにエリーゼ。公爵様があなたを心配した気持ちも、私分かるわ。あまり責めないで差し上げて」
「まあ、コルネリアは本当に人が良くて困るわ。しっかりした方に守っていただかないと、私、心配です」
ちらり、とエリーゼがギュンターを見る。
ギュンターは笑顔で応じた。
「コルネリアに守らせてくれる気があれば、俺のほうはいつでも応じるところですよ。エリーゼ様」