秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
8.あなたに誓いの言葉を
コルネリアの言葉が決定打となり、公爵の罪は不問に処すということで決まった。
仮面舞踏会の参加者には、公爵令嬢がさらわれたが騎士団の活躍により救出したと伝えることになるだろう。
夜会の際は通例とはいえ、もう明け方に近い。クラウスはあくびを噛み殺しつつ、公爵に苦言を呈した。
「叔父様、これを機に少しお立場をお考えください。いい加減になさらないと父上に言いつけますよ」
「何をだ」
一晩でげっそりとやつれた感じのあるバルテル公爵は、すぐにでも家に帰りたいとばかりに部屋を出ていくところだ。
「あの領土境の物見櫓。私が気づいていないとお思いですか。あれは砦でしょう。明らかに領土の防備を意識したものだ。まさかとは思いますが、王家への反逆を企てているわけではありませんよね」
「そ、そんなことあるはずがないだろう」
「そうであると信じております。物騒な積み荷の件といい、叔父様の動きには目に余ることが多すぎます」
「叔父に向かってその言い方はなんだ」
「これは王子として進言しております」
「……私は兄上を王と立てて国を支えると誓った。その言葉に嘘はないっ」
吐き捨てるように言って、バルテル公はエリーゼの腕をひっつかむ。
「エリーゼ、お前も帰るぞ」
「嫌よ。私はまだ残るわ」
「ええい。どうしてそう言うことを聞かないのだ」
顔を真っ赤にして怒る公爵に、エリーゼは負けじと突っかかっていった。
「それより、お父様。ヴィリーとのこと、認めてくださるのよね? ちょっと聞いているの、お父様!」
そのままふたりは部屋を出ていくが、押し問答は続いたままだ。人の話を聞かないところは親子でそっくりのようだ。