秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「僕も公爵様と話してまいります」
ヴィリーはギュンターの前で立ち止まると最敬礼をする。
「ギュンター様、本当にありがとうございます。ここから先は自分で頑張ります」
「応援しているよ。もし何か困ったらベルンシュタイン家を訪ねてこればいい」
「はい!」
晴れやかな顔をして、扉前でクラウスにも一礼し、部屋を出ていく。
騒々しい面々が退出して、部屋は一瞬静寂に包まれた。
「やれやれ。これで叔父様もしばらくはおとなしくなるだろう」
両手を天に向けて上げ嘆息するクラウスに、ギュンターは冷めた視線を向けた。
部屋に残っているのはクラウスとギュンターとルッツ、そしてコルネリアだけだ。
もう取り繕う必要もあるまい、と口調も砕けて問いかける。
「白々しい。そう導いたのはお前だろう?」
「どういう意味だよ」
困ったように両手をあげ、防御の姿勢を見せたクラウス。ギュンターは攻撃的な視線を向けてたたみかけた。
「誘拐事件の犯人はバルテル公だ。しかし、今回の仮面舞踏会を使ってバルテル公の力をそぐために画策したのはお前だろう」
確信的に言い放ったギュンターを、クラウスは目を見張って見つめる。
そして今までとは打って変わって、瞳に狡猾な色を載せて笑う。
凡庸な第二王子が、きれいに隠していた策略家としての顔をあらわにした。