秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「お前はつまらない男だなぁ。少しは自分の意思で決めようとか思わないのかよ」
「母上にお任せする、というのは自分の意志じゃないのか?」
「そんなんじゃなくてさ」
ノンノンノン、と指先を横に振りながら立ち上がると、侍従に小声で言いつけ、別室から何かを持ってこさせた。
「そこで今日呼び出した本題に入ろう。要はね、運試しをしようということだよ、ギュンター」
「……意味が全く分からないな」
「これだ」
クラウスが取り出して見せたのは、張り子で作られた額から鼻までを覆う仮面だ。鼻が異様に高く、目周りに葉っぱのような模様が描かれている。
「お抱えの画家に作らせたんだぞ」
「精巧な出来だ。しかし、これで何をしたいのかは全く分からない」
「おや、君にしては察しが悪いな。仮面の使い方くらいわかるだろう。こうだ」
クラウスは楽しそうに一礼しながら仮面を顔に当てる。そして、手のひらを天井に向けて踊りに誘う紳士のようにギュンターの前に差し出した。
「……仮面舞踏会か」
「ご名答。君のところに縁談をよこしているだろう貴族のご令嬢もたくさん呼んでいる。服は俺のを着るといい、体格はそう変わらないだろう? 仮面をつけてても惹かれる女性。それが君の運命の相手だ」