秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「……正式な申し込みを終えたら、また会いに行きます」
「は……」
返事の前に、息を吸い取られた。
腰を押さえられ、逃れることもかなわず、コルネリアは彼の口づけを受け止めた。
逃げたいわけではない。しかし初めての経験にどう反応していいのかわからない。
呼吸がうまくできずに、唇が離れた瞬間に吐息をつくと、ギュンターが楽しそうに笑った。
「まいったな。攻めがいがある可愛らしさだ」
「攻め……って、何する気ですか」
「まあでも正式な妻になるまでは待ちますよ。お約束します。俺はあなたの意思を尊重する。なにせあなたは人のことばかり考えて困っている。俺には、いつも自分の気持ちを優先して応えてほしい」
「ギュンター様」
「時には仮面をかぶって身分を捨てて……です。ただの男になったとしても、あなたがただの女であったとしても、俺はあなたを選びますよ」
「……私もです」
「じゃあ誓いのキスを」
「え、あの」
戸惑うコルネリアの唇に、ギュンターはその後しばらくキスの雨を降らせた。
固くつぶられた瞼からじきに力が抜け、上気した顔はギュンターの体にも火をつける。
ギュンターはもっと深く彼女を味わおうと、艶のある唇を舌で割ろうとした。
それが中断されたのは、ノックもなく入ってきたクラウスによってだ。
「おい。いちゃつくのはいいが、そろそろ夜が明ける。いい加減、寝室に引き上げてくれないと、侍女たちが休めなくてまいってしまうじゃないか」
「ああ、そうか。では行きましょうか」
「同室を用意するか?」
「婚約までは紳士でいるよ。もともとの部屋でいい」