秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

顔を真っ赤にするコルネリアをエスコートし、彼女が最初に軟禁されていた部屋まで送る。
窓辺ではいまだ白薔薇が美しく咲いている。それにちらりと目を向けた後、彼女の頭頂にキスをした。


「おやすみ、美しい人」

「おやすみなさい」


会話の一部始終を聞いていたクラウスは、暑苦しい会話にあきれつつ、コルネリアの前では紳士然として見せる。
扉を閉め、ギュンターと二人になって少し歩いてから、ようやく態度を砕けさせた。


「お前、案外女に溺れるタイプだったんだな」

「本気になれる女性はそうそういるわけじゃないからね」

「半日前まで結婚は家のものだと言っていたくせに」

「それはその通りだ。しかし恋は人を強くする。それで俺が伯爵家のために働けるというならば、この結婚も家のためだろう」

「夫人にどやされるぞ」


からかうように言ったクラウスに、にやりと笑って返す。


「望むところだ」


あの母をやり込めるのもたまには楽しいだろう。

そう思って、自分で笑ってしまう。
今までは、会話するのも面倒だと思っていたくらいなのに。
だからこそ、縁談も任せると言ったはずだったのに。


きっと自分は、待っていたのだ。

彼女のためならいくらでも戦ってもいい、そう思えるような人と出会えるのを。


< 115 / 147 >

この作品をシェア

pagetop