秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
顔を真っ赤にするコルネリアをエスコートし、彼女が最初に軟禁されていた部屋まで送る。
窓辺ではいまだ白薔薇が美しく咲いている。それにちらりと目を向けた後、彼女の頭頂にキスをした。
「おやすみ、美しい人」
「おやすみなさい」
会話の一部始終を聞いていたクラウスは、暑苦しい会話にあきれつつ、コルネリアの前では紳士然として見せる。
扉を閉め、ギュンターと二人になって少し歩いてから、ようやく態度を砕けさせた。
「お前、案外女に溺れるタイプだったんだな」
「本気になれる女性はそうそういるわけじゃないからね」
「半日前まで結婚は家のものだと言っていたくせに」
「それはその通りだ。しかし恋は人を強くする。それで俺が伯爵家のために働けるというならば、この結婚も家のためだろう」
「夫人にどやされるぞ」
からかうように言ったクラウスに、にやりと笑って返す。
「望むところだ」
あの母をやり込めるのもたまには楽しいだろう。
そう思って、自分で笑ってしまう。
今までは、会話するのも面倒だと思っていたくらいなのに。
だからこそ、縁談も任せると言ったはずだったのに。
きっと自分は、待っていたのだ。
彼女のためならいくらでも戦ってもいい、そう思えるような人と出会えるのを。