秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


翌日の昼過ぎ、エリーゼとコルネリアは、ギュンターとクラウスに見送られて東の宮をたった。

コルネリアとエリーゼの汚れた衣装は、働き者の使用人たちのおかげで寝ている間の数時間で綺麗になっていた。
今日はもともと着ていた衣装に戻り、エリーゼが飾りも華やかなマリーゴールドのドレス、コルネリアのほうが落ち着いた紫と黒のドレスを着ている。

通常ならばエリーゼと並ぶと影のように沈むコルネリアだったが、別れ際にギュンターに熱烈に言い寄られたために頬が上気しているのと、胸に刺した白薔薇のせいで、楚々とした美しさの中に妙に色気が出ていた。


「やっぱり恋をすると女は綺麗になるものね」


楽しそうに言うエリーゼに、もうとっくに見えないだろうにまだ箱馬車の窓から門のほうを眺めていたコルネリアは、我に返った。


「ごめんなさい。何か言った?」

「今日のコルネリアは綺麗よって言ったのよ」


箱馬車の窓からはあたたかな日差しが差し込んでいる。
エリーゼは持ち込んでいたクッションを背中にあて、あくびをした。
あの後、公爵と言い合いをしたので、睡眠時間はコルネリアより少ないのだ。


「エリーゼ、結局ヴィリー様との結婚はどうなりそうなの?」

「そうね。昨日はお父様が意気消沈しちゃってて、全然お話を聞いてくれなかったの。でも、クラウスが口をきいてくれるといったから、何とか押し切ろうと思うわ。クラウスがいうには、父は体面が大事だから、ヴィリーを子供のいない侯爵家あたりに養子に入れてという形を取るかもしれないと言っていたけど」

「でもその爵位は養子には受け継げないものでしょう?」

「当座がしのげればいいのよ。だってヴィリーは優秀だもの。きっと国王様から爵位をいただけるほどの武勲を立ててくださるわ」

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