秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~



招待客もほとんどいなくなり、東の宮は相変わらず使用人たちが忙しく動いている。
ギュンターは帰宅の準備をし、東の宮のエントランスでクラウスに別れを告げていた。


「では俺も帰るよ。いい夜をありがとう、クラウス」

「また企画しようか」

「次は普通の夜会を頼もうか。コルネリアを連れ出す口実になる」

「はいはい。お前だって俺を都合よく使うじゃないか」


笑うクラウスに見送られ、ギュンターはルッツを伴い帰路につく。

休憩を入れながら三時間、その間に、ルッツの世間話を適当に流しながら論理武装を固めていく。
屋敷に帰り着くと、出迎えたのは予想通り怒りをあらわにした母親だ。


「ギュンター、昨晩の使いはなんなの! 縁談はバルテル公爵家のエリーゼ様で決めるつもりよ。なのになぜベレ家の肖像画を持って行ったの」

「これは母上。ご機嫌麗しゅう。やはり縁談相手は自分で決めます。ベレ家のコルネリア嬢。俺の妻になるのはこの人です」


しれっというギュンターに母は顔を真っ赤にして反論する。


「何を言っているの! あの公爵家と縁戚になれるのよ? あなたの出世にだって影響するの、わかっているの?」

「いろいろありましてね。エリーゼ様のお相手はもう決まりました。それに、公爵家の縁戚にはならずとも大丈夫です。なんといっても、俺とクラウス第二王子は友情の絆で結ばれておりますから。それにベレ家と縁戚になれれば交易を通しての事業の発展が期待できます。いいですか、母上。土地が栄えるには交通が重要です。貿易港があるベレ領は必ず発展します。そのための増資をいっそ我が家からしてはいかがですか。将来的に必ず倍になって戻ってきますとも」

「……あなたって子は!」


いきり立つ夫人の後ろで、のんびりと伯爵が現れる。これ幸いと、ギュンターは畳みかけた。
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