秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
仮面舞踏会の一夜が明け、エリーゼとコルネリアはバルテル公爵家へ戻った。昨日の今日で公爵とは顔を合わせづらい。早々にお暇しようと腰を上げたコルネリアの腕をエリーゼが引き止める。
「うちで一泊してお行きなさいな」
「でもご迷惑だわ。それに……」
「お父様のことを気にしてくれるなら余計ここに留まってちょうだい。頬の腫れがまだ残っているわ。この状態で帰したら、ベレ伯爵様がお怒りになるもの」
コルネリアは首を横に振った。
「父は、私のことで怒ったりはしないわ。今回のことは私たちの秘密にしましょう。これは転んだとでも言うわ」
これ以上公爵に嫌われるのは嫌だし、波風を立てるのもコルネリアの本意ではない。
しかし、エリーゼはかたくなに首を縦に振らなかった。
「内緒にするのはかまわないけれど、それは転んでできるような怪我ではないわ。せめて一晩だけでも泊まっていってちょうだい。うちのお抱えの医師に診てもらいましょう」
ためらいがあったが、エリーゼの必死さに頷かざるを得ない。
迎えに来ていた馬車の御者ともども、お世話になることにした。
その夜、コルネリアはバルテル公爵夫妻とエリーゼの兄夫婦、エリーゼとともに食卓を囲む。
「ですから、ヴィリーとの結婚、認めてくださいますわね、お父様」
「いや、しかし」
「まあコルネリアにこんな怪我までさせて白を切るおつもり?」
困り切った公爵に、エリーゼが畳みかける。兄夫妻は余計な口を挟まないようにと無言を貫いていた。
そこで、夫人がフォークを置き、ため息をつく。