秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「……女性に乱暴するような方だとは思いませんでしたわ。しかも娘同然のこの子に。確かに公爵家の娘がなんの爵位もない男に嫁ぐなど言語道断ですが、人を陥れようとするのも身分のあるものとしていかがかと思いますわ」
バルテル公爵夫人――エリーゼの母は、昔から姪にあたるコルネリアを気にかけてくれている。
そのコルネリアに怪我をさせたということで、当初は公爵寄りだった夫人は、今はエリーゼの味方になりつつある。
どうやらコルネリアをとどめておいたのはエリーゼの作戦だったらしい。
「あの、おばさま。ヴィリー様はとても良い方ですわ。公爵様のことも、エリーゼを心配なされたからこそと気遣っておられましたし」
「まあ、器が大きくていらっしゃるのね。それに比べて……あなたって人は」
「待て。エリーゼの結婚のことはちゃんと考えている。養子縁組を引き受けてくれる家を探しているところだ。エリーゼには多額の持参金が付くから、食いついてくる貴族はいくらでもいる」
「本当ね! ちゃんと聞いたわよ。お兄様も、コルネリアも聞いたわよね?」
言質をとってご満悦のエリーゼは、その晩コルネリアと一緒に寝た。
翌朝、コルネリアの頬は、公爵家の侍女たちがこまめに冷やすものを持ってきてくれたおかげで、ずいぶん引いていた。
朝食を終え、コルネリアはお礼を言ってバルテル公爵家を出る。