秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「お姉さま!」
上から声がして見上げれば、くるくるの栗毛の髪をポニーテールに結って、元気そのものという様子で階段を駆け下りてくる娘がいた。コルネリアの妹、今年十二歳になるフィーネだ。
「お帰りなさい、お姉さま、どちらはどなた?」
「ああ、フィーネ。ただいま。こちらは、……ええと、ベルンシュタイン伯爵家の使いの方よ。お父様はどこにいらっしゃる?」
「今日はヨナスと港の視察に出てるわ。お母さまなら……」
「どうしたんです、騒々しい」
フィーネが言い切る前に、奥方が奥から現れた。コルネリアにとっては義理の母になるベレ夫人だ。
「お義母様、お客様ですわ」
「コルネリア、今日は早かったのね。お客様って……」
「ベルンシュタイン家の使いの方です」
「ベル……っ、何をしているの、早くお通ししてちょうだい。もう、コルネリアったらぽやっとしてないで」
夫人は慌てて使用人を呼び出し、先ほどコルネリアが言ったのを同じようなことを言いつけていく。
「こちらの応接室へどうぞ。あいにく夫は今ででておりまして。領内にはいますので呼んでまいりますわね。くつろいでいてくださいませ。コルネリア、お通しして差し上げて」
「はい」
今からするところだったのに、とは口に出さない。
義母は悪い人ではないのだが、マイペースで人の話を聞かないところがある。
コルネリアは苦笑して、ルッツを応接室へと招いた。