秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「どうぞかけて休んでください。驚きましたわ。朝一番に出たとしても、どうやってこんなに早くここへ来れたのです?」
ベルンシュタイン家は国の北西部、対してベレ家は南西部で、王都からの距離はどちらも同じくらい。
コルネリアはバルテル公爵家から戻っただけだが、ベルンシュタイン家からならば倍以上の距離があるはずなのに。
「馬と馬車では速度が違いますから。それに、ベルンシュタイン領は鉱山地帯ですので、健脚の馬を取り揃えているんですよ。まあ、今回は僕も頑張ったってのもあります」
「まあ」
胸を張るルッツは、愛嬌があり、どことなく人を和ませる雰囲気がある。
人と話すのは苦手なコルネリアも、彼の人柄にはほっとし、使用人が持ってきたお茶を自らよそり、彼に差し出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます。すみません、本当ならこんな部屋にはいれるような立場でもないのに」
「とんでもないですわ。もしよければ、今日はどうぞお泊りください。部屋を用意させます」
「本当ですか。助かります」
ほっとしたように、ルッツはお茶を一気に飲んだ。どうやら本当にのどが渇いていたらしい。
「それに、なんかほっとしましたわ。来てくださって、一昨日のことが夢じゃなかったんだと思えました」
もう数日たったら、自分の空想ではなかったのかと疑ってしまうだろう。
そのくらい、ギュンターからの求婚は思いがけないことだったのだ。