秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「ギュンター様もそうおっしゃってました。コルネリア様の中で、昨晩の出来事が現実のうちに持っていけ、と言われまして。本当は昨日のうちに出発させられるところだったのですが、旦那様のとりなしで一晩休ませてもらえました」
「まあ」
ルッツの言い方がおかしくて笑うと、おもむろにルッツが封筒を一枚差し出した。
「こちらは伯爵あての書簡なんですが、こちらはコルネリア様宛です。どうぞ」
渡された封筒には、ベルンシュタイン家の印で封がされている。香をたきしめてあるのか、甘いバニラに似た匂いが鼻をくすぐった。
「読んでいいのかしら」
「もちろん。お返事を頂けるならば僕が持ってまいります」
「そう? ではちょっと失礼します」
封を開け便箋を開くと、彼らしいと思えるような几帳面に揃えられた文字が並んでいた。
【昼間別れたばかりだというのに、もうあなたに会いたい】
その言葉を証明するように、あり得ない速さで届けられた文。コルネリアの胸は熱く高鳴っていく。
【抱きしめた感触が記憶から抜け落ちる前に会いに行きます】
「まあ」
コルネリアは何度か瞬きをする。けれどその文字は消えることはない。
本当に夢ではないのだ。あのギュンターに思われている女性が自分だということを、この手紙が証明してくれている。
コルネリアは手紙を胸に抱きしめた。私も会いたい、今すぐに。その思いをギュンター様にも伝えたいと思った。