秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
3.仮面舞踏会の夜

東の宮は夜に向けて慌ただしさを増していた。

廊下を行き来する使用人たちは若干小走りになっており、自分たちが出ては彼らの動きを止めてしまうからとギュンターとクラウスは部屋にこもっている。


「さすがギュンター様、よくお似合いです」


ギュンターの従者であるルッツは感嘆のため息を漏らす。


「仮面が似合うといわれても、嬉しくはないよ、ルッツ」

「服のことですよ。いつもと違ってちょっと派手ですがお似合いです」


白のストライプがはいったライトブルーのジャケットに、ブラウンベースのベストに白のレースシャツ。ベージュ色のサテンニッカーと言われる七分丈のスボンといういでたちは、クラウスが用意したものだ。


「着てきた衣装でいいと言ったのにな」

「ギュンター殿はいつも黒ベースの落ち着いた装いしかなさらぬからな、これで仮面があれば別人だろう」


にやにやしながらギュンターに目をやるクラウスに、ギュンターは目を細くして言い返す。


「そういう殿下は今日は随分とおとなしくなさっておいでで」


豪華な金のアクセントのボタンつきのダークブルーのジャケット。上着と同色のサテンニッカー、レースの胸ひだ飾りのあるホワイトレースシャツだ。

いつもは赤やオレンジといった奇抜な色を服装に取り入れたがるクラウスにしては、ずいぶん地味目に構成されている。

これに仮面をかぶれば、確かに誰が誰だかわからなくなる。

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