秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
***
広間を出たコルネリアは、走るようなスピードで前庭まで出てきた。
第二王子の住む東の宮の庭園は、多くの種類の薔薇が咲き誇る薔薇園が有名だ。目の高さまでの生け垣がいくつも並び、迷路のような構造になっているその場所は、至る所にランプが配置され、迷いの森のような雰囲気に仕立て上げられている。
コルネリアはそこまで来て大きく息を吐き出した。
「……びっくりしたわ」
清潔そうな、見た目も立派な紳士に踊りに誘われ、舞い上がっていたのかもしれない。
コルネリアは普段、夜会に出てももっぱら壁の花だ。
一通りの踊りは習得しているが、経験が少ないためあまり上手とは言えない。今日のようにステップなどを気にせず、音楽に乗って手や足が自然に動くような踊りをするのは初めてだった。
男性は、時折もたつくコルネリアにいら立ちもせず、優しく手で行く先を指し示し、転びそうになってもフォローしてくれた。
あまりに気持ちよく踊っていたので、コルネリアはいま、自分がエリーゼの服を借りていることなど忘れていたのだ。
それが、男性の呼びかけでハッと目が覚めた。
『あなたは、エリーゼ嬢ですか?』
服装の豪華さを見れば、気づく人は気づくだろう。それはつまり、自分が彼をだましていたということに他ならない。納得してそうしたとはいえ、だまされた側の男性の気持ちを思えば、胸がチクリと痛かった。
慌てて手を放して出てきてしまったが、彼はどう思っただろう。
傷ついた?
それとも、追いかけてこないところを見れば、案外なんとも思われていないのかもしれない。
きっと自分は気にしすぎなのだ。そう納得させて、コルネリアは顔を上げた。
広間を出たコルネリアは、走るようなスピードで前庭まで出てきた。
第二王子の住む東の宮の庭園は、多くの種類の薔薇が咲き誇る薔薇園が有名だ。目の高さまでの生け垣がいくつも並び、迷路のような構造になっているその場所は、至る所にランプが配置され、迷いの森のような雰囲気に仕立て上げられている。
コルネリアはそこまで来て大きく息を吐き出した。
「……びっくりしたわ」
清潔そうな、見た目も立派な紳士に踊りに誘われ、舞い上がっていたのかもしれない。
コルネリアは普段、夜会に出てももっぱら壁の花だ。
一通りの踊りは習得しているが、経験が少ないためあまり上手とは言えない。今日のようにステップなどを気にせず、音楽に乗って手や足が自然に動くような踊りをするのは初めてだった。
男性は、時折もたつくコルネリアにいら立ちもせず、優しく手で行く先を指し示し、転びそうになってもフォローしてくれた。
あまりに気持ちよく踊っていたので、コルネリアはいま、自分がエリーゼの服を借りていることなど忘れていたのだ。
それが、男性の呼びかけでハッと目が覚めた。
『あなたは、エリーゼ嬢ですか?』
服装の豪華さを見れば、気づく人は気づくだろう。それはつまり、自分が彼をだましていたということに他ならない。納得してそうしたとはいえ、だまされた側の男性の気持ちを思えば、胸がチクリと痛かった。
慌てて手を放して出てきてしまったが、彼はどう思っただろう。
傷ついた?
それとも、追いかけてこないところを見れば、案外なんとも思われていないのかもしれない。
きっと自分は気にしすぎなのだ。そう納得させて、コルネリアは顔を上げた。