秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
三十分ほど夜風に吹かれていただろうか。
コルネリアは身をひそめるようにしていた白薔薇の生垣から出て、会場である大広間へ戻った。
壁際に並べられた軽食も大分少なくなっていて、踊る人よりも語らう人のほうが増えてきたようだ。
居場所を求めてさまようコルネリアの目の前に、突然、手が差し伸べられた。
「美しいお嬢さん。僕と踊っていただけませんか?」
ダークブルーのジャケットを着た、大柄の男性に声をかけられ、コルネリアはたじろいだ。
宴も中盤となれば食事を理由に断るわけにもいかない。しかし、先ほどの失態を思い起こせば、もう一度踊ろうという気にもなれなかった。
コルネリアは口元に笑みを称え、「ごめんなさい。疲れてしまったの」とだけ返す。
しかし男性は簡単にあきらめる気はなさそうだ。
「おや、先ほどの紳士とは上手に踊っておられたでしょう」
「上手だなんてとんでもない。お恥ずかしいですわ」
どういえば、放っておいてくれるだろう。
コルネリアが悩みあぐねていたとき、老齢の執事が扉を開け、きょろきょろとあたりを見回したと思ったら、コルネリアの隣の男性のもとへと近寄ってくる。
執事はちらりとコルネリアを見ると、声を潜めて男性に耳打ちした。