秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

「……男女の組み合わせで抜け出されたとのことなのですが、どうも様子がおかしかったようなのです。招待客の馬車はすべて敷地内の馬房付近に待機させてあります。しかしふたりは屋敷を出たところに用意された馬車に乗り込んだらしく、こちらの招待客ではなかったのではと」

「おや。挨拶もなく帰るとは無粋だね」


コルネリアの耳にも、内容は聞き取れた。男女が抜け出したということは、きっと駆け落ちしたエリーゼのことだろう。

だとすれば、彼女たちが追い付かれないだけの時間を稼がなければならない。
コルネリアは頭をフル回転させ、彼の腕にそっと手を添えた。


「あの、やっぱり、踊ってはいただけませんか?」

「おや? どうなさいました。先ほどは嫌そうだったのに」

「いいえ、とんでもない」


本当にね、と心の中では相槌を打つ。
もう少しいい口実を思いつけないものなのか。どんくさい自分の頭が嫌になってくる。

男はコルネリアには口元で笑って見せると、執事のほうに小声で問いかけた。


「誰か追っていないのかい?」

「近くにいた騎士が」

「ならばその報告を待とう。さ、踊りましょうかレディ」


今更断る訳にもいかず、コルネリアは彼の手をとってステップを踏んだ。

最初に踊った紳士と体格は同じくらいなのに、踊り方は違い、彼は自分の感覚を大事にするタイプのようだ。音に合わせて踊るステップも、盛り上がりの時は激しく、そうでないときはゆったりで、正直初めて踊るにはやりにくい。

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